げに恐ろしきは好々爺也
先月、成田新十郎先生と約1年ぶりにお会いする機会があった。
昨年の講習会でお会いしたが、お加減が悪くなりしばらく入院されていたと聞いていた。
快気と米寿のお祝いにかこつけて(笑)また合気道についてのお話を聞こうと、菓子折りを持って。
けっこう大きな病気と聞いていたが、昨年お会いした時と変わらずお元気で安心した。
そして・・・米寿は過ぎていた・・・うっかり・・・。
先生は、
「卒寿(90才)の時にお祝いして下さい。もう人間も卒業です。」と、にこやかに笑われた。
相変わらずの好々爺ぶり。
色んな話をしてる中、合氣研究所の小形さんと一緒に来た方が、
合気会の70代の先生に『成田新十郎って人知ってるか!?あの人は本物だ!あんな人、一体どこに隠れてたんだ!?』と言っていた、という話をしていた。
別に隠れてたつもりもないだろうが、それだけ平井稔の合氣道は『影の合気道』という事か。
また、別の方は、修験道の修行をしてる友人が『あの先生は悟っている。』と言っていましたよ、と先生に話していた。
成田先生は「悟ってるなんてとんでもない!」と笑ってらっしゃったが、あながち間違えではないと思った。
暫くして、うちの白石先生が、
「今も毎日稽古してらっしゃるんですか?」と尋ねた。
成田先生は、隣りに座っていた先ほどの小形さんを見て、
「今は何があるか分からない時代だし、彼みたいに力の強くて身体の大きな人に突然襲われたら力では勝てないけど、その場を何とか切り抜けないといけないですから、どうしようかと常に考えますよ。」と言った。
「僕はそんなことしないですよ~!」と、言う小形さんと皆で顔を見合って笑っていたが、
「いや、本当ですよ。」と言った成田先生の顔に笑顔は無かった。
後日、その場にいた仲間とその話をしたが、戦慄が走ったのは僕だけではなかったみたい。
あの顔は本当に怖かった・・・。
その後、少しだけ白石先生とOさんが成田先生と手を合わせた。

動画で撮っていたのだが、さすがにプライベートな空間なので、加工して写真で。

こちらはOさん。彼は先日も話した通り、合気会と剣術の有段者。
成田先生とは2回目だけど、今回もどうやって投げられてるのか全く分からなかったそう。
20分近く休まず動いてらした。
本当に大病をした90才目前の人なのか?と思った。口あんぐり。
そろそろ帰ろうかと言う時に、僕とNさん以外の稽古仲間がおもむろに先生の著書を取り出した。
そして誰ともなく「・・・先生、あの~サインを・・・。」
何度か成田先生にお会いしてるが、二度と会えない有名人という感覚もないし、
白石先生の先生、つまり孫弟子と大師匠。サインを貰おうなんて発想すらしなかった。
でもよく考えれば、である。
成田先生とは今度いつお会いできるか分からないし、大変失礼ながら、もう会えない可能性もないわけではない。そう考えると貰っておけば良かったなぁ、と。
でも、残念ながら著書を持って来ていなかった。
帰り際、先生が玄関まで皆を見送ってくれた。
僕は一番最後に玄関を出て、「先生、またお会いしましょう。」とお辞儀をした。
「はい、またお会いしましょう。」と、先生もにこやかに返してくれた。
何だかそれが異常に嬉しかった。
卒寿のお祝いに、また是非お会いしたい。
その時、僕もサインを貰おうかな。横に何か一言添えてもらって。
それまでに少しでも上達するように精進しないと。
よし、頑張ろう。